こんにちは、今回も日経DIオンラインからの転載です。
よろしくお願いします。
↓↓↓
日経DIオンライン 離島薬剤師たちの「リファネット通信」4月18日掲載分より↓↓↓
「大きい薬は飲めないよ」――この訴えがきっかけでした。
母親の介護をしている息子さんが処方箋を持って薬局を訪れました。鼻閉を訴える母親に、医師からディレグラ配合錠(一般名フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン)が処方されていました。
ディレグラは長径17.5mm、短径7.8mm、厚さ6mmと大きな錠剤なので、念のため嚥下能力を確認する必要があります。そこで息子さんに母親の様子を聴取したところ、「癌の末期でベット上で過ごすことが多く、いつも薬は抱き起こして飲ませている。大きい薬は飲めないよ。引っ掛けやすいんだ」とのこと。こりゃ困った!
メーカーに確認したところ、ディレグラはプソイドエフェドリンが徐放層になっているとのことで、分割や粉砕はできないと考察しました。「んー、どうしよう」と考えていたところ、息子さんが何気なく、「今までOTC薬を服用させていたんだが、それは小さくてちょうどよかった。だけど、効かなかったんだ」と話してくれました。
それを聞いて、ハッとひらめきました。以前、メーカー主催の勉強会で、ディレグラにはもともとOTC薬の成分が入っていると言っていたのを思い出したのです。つまり「ディレグラ=アレグラ+塩酸プソイドエフェドリン」であり、塩酸プソイドエフェドリンはOTC薬の成分です。うちの薬局には、パブロン鼻炎錠S(指定第2類医薬品)があります。
そこで各薬剤の大きさを比べてみました。
各薬剤の大きさは……
商品名
剤の大きさ
ディレグラ配合錠
長径17.5mm、短径7.8mm、厚さ6mm
アレグラOD錠60mg
直径11.0㎜、厚さ4.1㎜
パブロン鼻炎錠S
直径9㎜、厚さ5㎜
息子さんにこの錠剤の大きさを伝えると、「大丈夫!それなら飲めるよ」と言ってくれました。OTC薬は自費になってもOKとのこと。
早速、処方医に電話をかけて提案したところ、変更を了承してくれました(詳細を服薬情報提供書にまとめ、処方医に報告しました)。数日後、息子さんに確認したところ、お薬はしっかり飲めたようで、鼻閉も改善したとのことでした。
確かに保険調剤も大切な仕事。しかし、OTC薬も薬です。様々な医療職種の中で、成分を聞いて、医療用医薬品だけでなくOTC薬も思い浮かべることができるのは薬剤師だけではないでしょうか。「処方薬×OTC薬」で治療して、その情報をチームで共有する――。薬のプロとしての「薬剤師的仕事」だと思っています。
■追記(2014.4.23)
・記事のタイトルが、誤解を招く表現だったため、変更しました。
・読者の方からのコメントでも頂戴しておりますが、パブロン鼻炎錠Sの添付文書には「抗ヒスタミン剤を含有する内服薬」とは併用しないように書かれています。ここで紹介した患者さんのケースでは、手近にあった薬剤を使って、成分的に医師の処方に近い組み合わせを実現することを優先したため、変更により抗ヒスタミン成分が重複することになってしまいました。
・処方医や患者・患者家族の承諾も得ており、結果的に、このケースでは患者さんに有害事象は生じませんでしたが、だからと言って、この対応が常にベストであるというわけではありませんし、読者のみなさんに推奨するものでもありません。医薬品供給が必ずしも十分でない地域における、一つの症例報告としてご参照ください。

ディレグラの長径は17.5mm、短径7.8mm、厚さ6mmです。

アレグラOD錠60mgの直径は11.0㎜、パブロン鼻炎錠Sの直径は9㎜です。